タルト

その感情をどうにか言葉で表すとしたら、
それは『ざっくり』とした気持ちだ。
『さっくり』でも『ばっさり』でもなく『ざっくり』だ。
ナイフでパイを切り分ける感覚に似ているがそうともいえず、
かといってクリームたっぷりのショートケーキでは『ざっくり』いかないし・・・・・・
・・・・・そう。ちょうど、タルトを切った時の手ごたえだ。
ある程度の柔らかさと硬さをあわせもった、そんなタルトを切り分けるような気持ちだ。




「というわけで、はいコレ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「私の気持ち。プレゼント。」





ナルは無言で私の手元を見る。
チョコレートたっぷりタルトケーキ。
嫌がらせではない。決してそうではない。
ナルが甘いもの嫌いだと知っていていて、
あえて誕生日のプレゼントがこれ一つなのも、
これみよがしにローソクが21本灯っているのも、
決して嫌がらせではない。





「これは・・・・・・」
「誕生日だし」
「・・・僕は食べな」
「くてもいいよ。はい、コレ。」



そう言いながらなるに手渡したのは小型のナイフ。




「切って。」
「・・・・・・・・。」
「食べなくてもいいから切って。
 ナル、ケーキ切ったことないでしょ?」



無表情だが、ナルが困惑しているのは手に取るようにわかる。



「切るだけでいいよ~。
 これは責任持って私がキチンと食べるから。」



「・・・・話を整理していいか?」

ナルが眉をひそめる。

「どうぞご自由に。」

私はにこやかに答える。




「・・・・これは、僕に対するプレゼントと解釈していい代物なんだな。」
「当然。」
「で、僕が切り分けて、麻衣が食べると。」
「そうだよ。」
「・・・・・・プレゼントという言葉の定義を知っているか?」
「おめでとうの気持ちを込めて大切な人に贈るものー。」
「・・・・・贈る本人が食べたら定義を失うと思うが?」
「だってナル、甘いもの嫌いでしょ?」




数秒間、沈黙。




「・・・・・まあいい。」


ナルが深くため息をついた。



「そ。じゃあ早く切ってよ。」

ナイフを押し返そうとしたナルに、再びそれを握らせる。

「               ・・・。何で僕が切らないといけないんだ?」
「言ったでしょ?私の気持ちをプレゼントって。」






その気持ちをどうにか言葉で表すとしたら、それは『ざっくり』した気持ちだ。
『さっくり』でも『ばっさり』でもなく『ざっくり』だ。
そう、丁度タルトを切ったときの手ごたえ。
それが私のナルに対する気持ち。
ある程度の柔らかさと硬さをあわせもった、そんなタルトを切り分ける気持ちだ。
簡単にはいかない。
でも、少し力を込めれば意外に『ざっくり』と切り分けられる。


そして、おいしい。


どうしようか、この男は。
好きも嫌いも一緒になってしまって、『さっくり』も『ばっさり』もいけず、
けど思いのほか『ざっくり』といけるので、離れることもできない。





本当に、なんでまた、こんな男なんか。







「はやく切って。それが私の気持ちだから。」
「?」





日々無頓着無神経無関心な貴方に。
せめて感覚だけでも分けてあげる。






チョコレートたっぷりタルトケーキ。
(ちなみにコレ、私の手作り)






はぴばすで、ナル。
悔しいけど愛してる。








ざっくり、おいしい、私の気持ち。








end







安田とおはるさんに見せたら
「タルト食べたくなる」と言われた小説です。
読者様のお腹が空いたら大・成・功☆(趣旨変わってるよ)

麗しの所長様、誕生日おめでとうございます。
お幸せに。(笑)

2004/9/19