手折る花

なら隣にいるしかない。



ただ、よく笑う奴だなと思って見ていた。
素直、というコトバがすぐに頭に浮かぶ、そんな奴だった。
いつのまにか一緒に居る事が多くなり
ついには半ば強引に生涯の仕事仲間にしていた。
決断は早かった。アイツが何か疑問を持つ前に、と思っていたから。
麻衣は何も知らず笑ってたけれど、既にそこから、なにかがおかしかった。



気付いた時には「もう遅い」と言い放つ準備だけは万全だった。



欲しかったのはいつもデータだったり物であって、人ではなかった。
だから、他人を自分の人生を巻き込むなんて、考えもしなかった。
本当に。なのに。
どうにも止まらなかった。
一番欲しくなってしまったのは、自分とはまったく違う人格を持った人間だった。
ずっと、一緒にいたいと思った。
自分の気持ちに素直に言い換えるとしたら、




手に入れたい、と思ってしまっていた。




できるわけがない。
手に入るものじゃないと、願った瞬間思い知る。
相手は生きている人間だ。
もし仮に、手に入れられたとしても、
その瞬間からアイツはアイツではなくなる。
手に入れるということは僕のモノになるという事なのだから。
それでは意味がない。
麻衣は麻衣のままでいてくれなければ意味が無い。
矛盾している。判っている。それでも。
それでも手に入れたいと。




思い悩んで出した結論。
なら隣にいるしかない。




手に入れたいと思っていて、
けれど手に入らないのもわかっていて、
でも他の人には絶対渡したくないから。
だから。
ずっと隣りにいることを選んだ。
選ぶしかなかった。




アイツが本当に気付いた時には「もう遅い」と言い放ち
押し倒す準備だけはいつも万全にして、
今は静かに現状を維持している。




手折った花は
たとえ綺麗だとしてもいつか枯れてしまうから。
それができないのならば、
根ごと地面から奪い去って
そして囲って生かすしかないのだ。
手の中に握ることはできないけれど
せめて逃げ出したりする事がない様に。




せめて、僕の見ている所で生きていて欲しい。
そして、死んで欲しい。
これが「恋」だといったら聞こえはいいかもしれないけれど、
少々行き過ぎている事は否めず、
結局は僕の我侭でしかなかった。






fin