. 「リンさんのバカー!!」
そう言って投げつけられたのは、色とりどりの折り紙。

七夕おりがみ

リンは今自分の身に一体何が起こったのかを判断出来ずにいた。
今日は平日である。(水曜日)
ちなみに深夜である。(寝てた)
そんな最中、突如鳴り響いたインターホンによってリンの安眠は妨害された。

「こんな時間に一体誰」「というか何の用だ」「宅配便・・・まさかな」
寝起きで様々な思考が乱れる中、不機嫌な顔で玄関のドアを開けると そこに立っていたのは。


「・・・・どうしたんですか?」
「・・・リンさん・・・」


そこに立っていたのは、SPRバイトの谷山麻衣。
俯いていたって、彼女であるということはすぐにわかる。

その肩が震えていることも。
その声が泣いていることも。


「・・・・どうしたんですか?」
「・・・リンさんの・・・」
「え?」


麻衣がキッと顔を上げる。
涙の浮かんだ瞳。
その瞳を見て一気に眠気が醒めたリンに投げ掛けられたのは


「リンさんのバカー!!」


甲高い罵声と、色とりどりの折り紙であった。



「・・・・・・・・・え!?」
「リンさんの・・・リンさんのせいだからねー!」

そう叫んだかと思うと、そのままうわーんと泣き出した。

リンは一体何が起きたのかわからずに困惑していた。
何があったのか問いただすのが先か自身の足下に広がる折り紙を拾うのが先か
目の前で泣いている最近20歳になった少女を中に入れて世間から隔離するのが先か。
数秒迷った結果、リンは素早く麻衣をドアの中に押し込んだ。
しっかりと鍵をかける。近所迷惑にならないようにとの賢明な判断であったことをここに記しておく。



「・・・・・で、何なんですか一体。」
「リンさんのせいだ~」
「・・・・だから何が?」


ぼろぼろに泣く麻衣がふらりと倒れそうになり慌てて支えると、
つん、と酒のにおいがリンの鼻を刺した。


「谷山さん・・・酔っていますか・・・?」
「酔ってないもん~」


呂律の回っていない口調で言われても何の説得力もない。
一体どれだけ飲めばこんなたちの悪い酔い方ができるのか。



とりあえず麻衣をソファの上まで運ぶ。
まだ泣きじゃくっているので、とりあえず落ち着かせるためにコップに冷水を入れてやる。


「で、何がどうして私が悪いのですか?」


呆れつつとりあえず尋ねる。
麻衣は冷水に見向きもせず、自分の鞄の中をゴソゴソと探っている。
その中からとりだされたのは、またしても折り紙の束。


「・・・・・・・・・・・・・・・・。」


まだあったのか。呆然としてその束を眺めるリンにはお構いなしに、
麻衣はその一枚を取ると、泣きながらそれを二つに折り曲げ始めた。


「あの、谷山さん。何をしているんですか?」
「折ってるんです!見ればわかるでしょ!?」


泣きながら睨まれてリンは黙る。
一体どれくらい飲めばこんなタチの悪い酔い方が出来るのだろうか。


「・・・・・・何見てるんですか?」
「え?」
「何ぼーっと眺めてるんですか?リンさんも折ってよ!!」
「は!?」


何故とかどうしてとか問いただす前に、麻衣は折り紙をリンのほうへ押しやる。
自身は鞄からハサミを取り出し、何回か折り曲げた紙に交互に切れ目を入れていく。
どっかで見たな、と思いながらリンはその手元を眺めていた。
切れ目の入った青色の折り紙を広げてみると、


「                   ああ!」


思い出した、とリンは声を上げる。懐かしいものを見た気持ちだった。


「リンさんも作って!」
「・・・・・・・・・。何で私が・・・・・・。」
「いいから作って!!」
「・・・・・・・・・。」


呂律の回らない口調で泣きながら命令される。

リンは深くため息をついた。
タチの悪い酔っ払いの扱い方。
それは、相手が話すすべての内容・行動が意味のないものと理解した上で
相手が寝るまで適当に相手をしてやる、という方法。


冷水を飲ませたことで大分落ち着いた麻衣の姿を見ながら、
リンは諦めて赤色の折り紙を一枚手に取った。


「リンさんのせいだからねー・・。」
「・・・・・・・・。」
「リンさんのせいで、」
「せめて鼻水は拭いてください。」
「リンさんのせーで今日曇ってるんだからね。」
「・・・・・・・・・・私のせいですか。」
「だから今日天の川見れないんだからね!」
「え?あ、今日、七夕でしたね。それでこんな飾り・・・・・。」
「今日の飲み会も来ないしさぁ」
「・・・・・・・・・。」
「ひっく・・・七夕なのに~」
「谷山さん、ハサミ貸して下さい。」
「曇ってるしー・・」
「・・・・・私は無実です。」
「何か言った!?」
「何も。」


麻衣の戯言に適当に相槌を打ちながら、作業は着実に進んでいった。
天の川、ぼんぼん、星・・・・・七夕の飾りが続々と仕上がっていく。


「・・・・で、どうするんですか、これ。」


自分で作った賑やかな飾りを横目で見ながら、リンはボソッと呟く。
それが聞こえたのか、麻衣は涙で濡れた目をこすって立ち上がり、
怪訝な視線を向けるリンなどお構いなしに玄関の方へと歩いていった。

数秒後、何やらザッザッと大きなものを引きずる様な音がして、
リンが不安を感じて振り返ると



「コレに飾るの。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



今度はさすがのリンも絶句した。
麻衣が右手に握っていたのは、ゆうにリンの身長は超えようかという高さの笹。


「・・・・・・麻衣さん、コレ、どうしたんですか・・・・・」
「かってきた。」


あまりのことに無意識に下の名前で呼んでしまうリンに
『買う』ではなく『刈る』の方の発音で麻衣ははっきりと答えた。


「刈ってきたって、それは・・・・・・・・・・」
「生えてたから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

どこで、どんな酒を、どんなテンションで飲めば、
こんな行動的で迷惑な酔い方が出来るのだろうか。
アルコールを全く飲んでいないリンのほうが頭痛がしてきた。


「はい、飾って。」
「・・・・私が、ですか!?」
「だって届かないもん。」
「・・・。・・・・・・・・・・・。」


行動的な酔っ払いは最強である。
リンは逆らうことも出来ずに、渋々大量の飾りを笹に括り付けていく。



すっかり飾り終えたときには既に空は明るくなっていて、
麻衣はリンのベッドで(勝手に)熟睡していた。
リンは明けていく空を見、麻衣の寝顔を見、笹を見て、
そういや願い事書く短冊作り忘れてた。
と、どうでもいいことを後悔していた。




だから昼過ぎに麻衣が起きてきて、
「うっわ何この大きな笹!え、コレリンさんが作ったの!?」
と言い放ったとき、寝不足のリンが麻衣に対して若干の敵意を覚えたのは
仕方のない事だとここで弁解しておく。









fin
最初は、間違えなくナル麻衣を書いていたのですよ。
が、色々修正を施していくうちに高田初リン麻衣小説になってしまいました。
うーん、言い訳はいっぱいあってどうしようか。(笑)
最初は、ナルと七夕に大喧嘩した麻衣がリンさん宅に押しかける、という感じだったのですが
書いてるうちに「・・これ別にナルいらないかも」と思ってしまい、
省略していった結果リン麻衣になりました。
高田は結構、GHはどんなCPでも読めるし書ける人なのですが、
苦手な方は苦手かもですね。(ちなみに安田は否定派)