リング・リンク・ビンゴ!! (3)

翌日。


「安原さん、何かいいことでもあったの?」
東京・渋谷の某事務所。
麻衣と安原はお茶を飲みつつ一休みをしているところだ。

「あ、わかります?昨日、滝川さんにおごってもらったんですよー。」
「えーいいなー!」
「婚約指輪をね。」
「へー指輪かあ。いいなあ・・・・・・・・って婚約指輪ぁ!?」
麻衣は大きな目をまんまるく見開いた。
「はい、買ってもらったんですよ。」
「え・・・・と、婚約指輪を?ぼーさんが?安原さんに??」
「はい。」
「・・・・・・・・一体いつからそのようなご関係で?」
「やだなあ。僕達前からラブラブだったじゃないですか!」
麻衣は気持ちを整理するためにカップの紅茶を一口飲む。
「・・で、その指輪は?安原さん今日それやってないの?」
「それはですねぇ、」










「ご機嫌だなあ少年。」
「はい。そりゃあもう。」
キレイにラッピングされた指輪は、今安原の手の中だ。
「そういう滝川さんは元気ないですね。どうしたんですか?」
「・・・・・・あーたりまえだろーがよー・・・・・」
もはや半泣き状態の滝川。今日一日でものすごい出費である。
男に指輪を買ってしまっただけでも不覚なのに、
その値段たるやン万円である。落ち込まないはずがない。


「いいか、俺絶対お前とは結婚しないからな!」
そう滝川が言ったのは彼なら本気で婚姻届を持ってくるかもしれないと警戒したからだ。
それに対し安原は
「あたりまえですよ。何言ってるんですか。」
「・・・・は?」
「何で僕と滝川さんが結婚しなきゃいけないんですか?」
「え、だって、お前、指輪・・・・」
予想外の答えに滝川は又困惑する。
「やだなあ、確かに僕は婚約指輪を買ってほしいとは言ったけれど、
 別に『僕の』婚約指輪とは一言も言ってませんよ。」
「そうだったか?いや、でも、相手は俺だって」
「だ-かーら、誰が『僕の』婚約相手だなんて言いましたか?
 滝川さんの指輪の相手なんて、もう決まってるじゃないですか。」
安原は呆れたように溜息をついた。
「だってお前、俺の事が好きだとか何とか言ってたじゃねーか!!」
「そりゃあ好きですよ。でも結婚なんて出来るわけないでしょう。
 僕だって出来るなら女性の方と幸せな夫婦生活を送りたいですよ。」

滝川は混乱した頭の中を整理しながら話を進める。

「えーと、つまり何だ、この指輪は『お前の婚約指輪』ではないわけだな。」
「はいそうです。あ、これお返ししますね。」
安原は指輪の入った紙袋を滝川におしつけた。
「・・・・・一体何なんだよ。じゃあ俺、別にあんな思いまでしてコレ買う必要
 なかったんじゃん。お前、一体何のために?」
「だって、こうでもしなきゃ滝川さん指輪なんて買わないじゃないですか。
 あんなお店、普段寄り付きもしないでしょ?」
「それはそうだけど・・・・・なんで又指輪なんか・・・・・」
「あーもうっ!」

安原が突然叫んだ。

「見ててイライラするんですよ!もうイイ年なのに二人とも意地っ張りだし
 お互いにわかっているのにぜんっぜん進展なしで!」
「は?お前何言って・・・・」
「大体ねえ、クリスマスも近いんですからプレゼントのひとつやふたつやみっつ
 考えておいてあげてもいいじゃないですか。
 松崎さん気が強い人だから何も言わないけど、それでも言葉や態度に
 現れまくりですよ。でも滝川さんものの見事に気付かないんですから。」
「なっ・・・・・・」
突然名前を上げられて滝川は絶句する。
「気付かないとでも思ってました?ばっかだなあ。
 ていうか多分皆気付いていると思いますよ勘のいい人ばかりですから。」
「そ・・・そーなのか?」
「そーですよ。ていうか隠してたつもりだったんですか?」
滝川は足の力が抜けそうだった。
「・・・まぁ、いい。それはわかった。
 でも、それならそれで、こんなまどろっこしい事しなくてもいいじゃねーか!」
「だって、だから滝川さん意地っ張りだから、こうでもしなきゃ動かないじゃないですか。
 実際、ほら、ちゃんと買えたでしょう?」
安原は勝者の微笑を浮かべる。
「・・・アノ店に居る全員に誤解されたじゃねーがっ。」
「教訓ですよ。ね、僕と来るよりは松崎さんと来たほうがマシでしょう?」
「そりゃあ・・・・・なあ。あーあ、俺新しいコンポ買いたかったのに。」
「あのねえ、コンポと指輪を比べないでくださいよ。
 松崎さんに安物の指輪買ったってすぐにばれちゃいますよ。
 それなりに上品なものでないと。ま、そんなに高級なのはムリですけど。」
「・・・・まぁな。」
滝川も苦笑する。





「あーあ、本気で心配して損したー」
「何言ってんですか。これからですよ。
 ちゃーんと場所と状況とをしっかり考えてから渡すんですよ。わかりました?」
「はいはい。・・・・でもコレ、綾のにしては少々地味じゃねーか?」
「だからいいんですよ。飾りけがないけれど、その分上品に見えるでしょ?
 あ、ちなみにサイズも松崎さんに合わせてありますから。」
「い、いつの間にサイズまで聞いて・・・・・」
つくづく用意周到、準備万端な安原である。
「オイ少年、大人で遊ぶのもいい加減にしろよ?」
「何言ってるんですか。遊ばれるほうが悪いんですよー。」
安原の心の底から楽しそうな笑顔を見て、起こる気持ちも失せてしまった。
「はいはい、じゃあ、帰りますか。」
安原の頭をぽんと叩いて、滝川は駅へと向かおうとした。
「ちょっと待ってください。滝川さん、どこ行くんですか?」
「どこって・・・帰るだろ?駅に」
「えっ、滝川さん。僕まだ何もおごってもらってませんよ?」
「・・・・・え?」
「何でもおごってくれるっていったでしょう?」


微笑み攻撃、再び。


「お前何ってるんだよ。俺ちゃんと指輪買ったじゃねーか!」
「アレは松崎さんへのプレゼントでしょう?僕のじゃないじゃないですか。」
滝川は身の危険を感じて後ずさりを始める。
「さ、お寿司食べに行きましょうか!」
「ちょ、ちょっと待て!俺もう金ねぇよ!寿司とか絶対ムリ!!」
「あれー?でもさっき言ってましたよね。『寿司でも食いにいこうじゃねーか』って」
「そ、それはあの時の話で今は別・・・・・・・・」
「大丈夫ですよ。この指輪に比べれば安いもんじゃないですか。」
滝川はもう限界だという風に駅に向かって走り出した。
が、安原がそれより一瞬早く滝川の腕をがっちり捕まえてそれを拘束する。
「この近くにね、芸能人御用達のおいしーいお寿司屋さんがあるんですって。
 僕みたいな庶民には手が届かないけど、一度行ってみたいと思ってたんですよー。」
「・・・・その寿司は回転していたりは」
「しませんね。 ちょーっと高いですけど、まあ、滝川さんも言ってしまえば芸能人ですし、
 なんとかなりますよ。ねー滝川さんv」
滝川は今日何度目かわからない、しかしその中でも最大のただならぬ悪寒を感じた。
「・・・・お前、まさか、このことまで含めて全部調べ済みだったのか・・・・?」
「何のことかなあ。さぁ、お腹すきましたし早く行きましょー。」

結局そのまま拉致られた滝川は、回転しない高級寿司を安原と共にしたのであった。














「・・・・・・・っはははははははは!凄い、凄い!安原さん面白いサイコー!!」
「でしょう?」
麻衣は滝川の災難に腹を抱えて爆笑した。
「つ、つまりぼーさんは指輪買って安原さんと結婚とか勘違いして
 オロオロしてたってわけだね。」
「そーなんです。おっもしろかったですよーあの時の滝川さんの顔!」
そういって二人で爆笑する。
自称父親の災難にけっこう薄情な娘である。

ひとしきり笑った後、二人は話題を元に戻した。
「ねえ、ぼーさんちゃんと指輪渡せるかなー。」
「大丈夫でしょう。あんだけ念を押しておきましたから。」
「そー言えば安原さん、綾子とぼーさんのこと、一体いつ気付いた?」
すっかり冷えたお茶をすすりながら麻衣は尋ねる。
「谷山さんはいつごろ気が付きましたか?」
「・・・・・・・・ぼーさんが、綾子の事『綾』って呼び始めた頃から。」
「・・・・バレバレなんですよねえ。」
「ねえ・・・・・・。」
そう言って溜息をつく二人であった。








(おまけ)
その日安原は事務所で居残り作業をし、
ナルやリンと一緒に事務所を出た。
リンが事務所の鍵を閉めている様子を背後で見ながら、
安原はふと、悪戯っ子のようにニコッと微笑んだ。

「次はリンさんですね」
「・・・・何がですか?」
「こっちの話です。お気になさらずv」



さて、リンさんの運命やいかに。






FIN


ハイ完結です。皆様、ごくろうさまでした。(笑)
安原滝川に見せかけた、盛大なるぼー綾話、いかがでしたか?
この作品自体、書いたのは16・・・くらいなので4年前の作品です。
色々加工修正しましたが、本質の流れは全く変わっていません。
むしろこの流れを素で書いていた自分を尊敬すらします。
安原さんが策士!黒い!詐欺師!(あわわ)
次の犠牲者は本当にリンさんなのでしょうかね・・・。