リング・リンク・ビンゴ!! (2)

「なあ、本当に行くのか?」

渋谷の某宝石店の前で滝川は立ちすくんでいた。


「ここまで来ておいて何言ってるんですか。さっ、行きましょうよ。」
「だけどよお、男二人で宝石店なんてどー考えてもオカシイだろうが。俺こーゆーとこ苦手だし。」
「大丈夫です。僕がついていますからvv」


・・・・・・・だからそれが問題なんだって、と滝川は思ったが何も言わなかった。


「ささ、行きましょう。Let's Go!!」

そう言いながら安原は滝川を引きずるようにして中に入った。
キラキラと、宝石がいたるところでライトを浴びて輝いている。
整頓された店内。上品そうな店員。かなり上流そうな雰囲気だ。

そして周りの客はカップルばかり。

そんな中で、男二人連れというのは非常に目立つ。
しかも、片方は元気いっぱいで、もう片方は半分魂が抜けかかっているぐらい
気力がない長身男なものだから、注目を集めない筈が無い。


「・・・おい、やっぱり考え直さねぇか?寿司くらいはおごってやるからさぁ。」


自分(達)が場にそぐわないと痛烈に感じている滝川は、
嬉々としてショーケースを覗き込んでいる安原に小声で声をかけた。


「あ、これいいと思いません?」

かくいう安原は人の話を聞いていない。

「ね、コレにしましょうよ滝川さん。」

彼だって周りの視線に気付いているが、逆にそれを楽しんでいるようだった。

「・・・・・お前、本気なのか?」


確かに冗談にしては悪ふざけが過ぎているが、
滝川には安原が『自分のことが本気で好きだから』指輪を買わせる、
というのはやはり何か違うような気がしていた。


「だっからー、何度も言ってるじゃないですか。
 僕は滝川さんのことが」
「分かったもう分かった。だからここでは言うな。」

店員の視線を感じた滝川はあわてて安原の言葉を遮った。

「・・・・・俺、お前が何したいのか全然わかんねー・・・。」
「大丈夫です。僕は滝川さんにどうしてほしいかを具体的にわかってますからv
 安心してくださいね。」


微妙にすれ違い続ける会話を交わしながら、
安原はやがてひとつの指輪を選んだ。


「コレ。滝川さんも気に入ってたし、コレに決めましょう。」
「・・・・・あのなあ、少年。」
「はい何ですか?」
「これ、桁がひとつほど多い気がするんだが・・・・・・。」


安原が手にしている指輪はシンプルなシルバーリングで、
何の宝石を買わされるのかとビクビクしていた滝川はとりあえずほっとした。

が、値段を見て驚愕した。



「何言ってんですか。ちゃんとした指輪ならこれくらいしますよ。」
「・・・あー・・・すまん少年。俺今こんなに金持ってないんだよ。
 だから指輪も、ついでに俺の事も諦めて、なっ、寿司でも食いにいこうじゃねーか。」


安原にどうしても諦めてもらいたい滝川は、
自分の金が無いという最大の武器を使ってすばやく店から出ようと試みた。


「ああ、それは大丈夫ですよ。」

安原はそんな滝川ににーっこりと笑いかける。

「何が大丈夫なんだよ!俺今金持ってないって言ってるだろっ。
 カード払いしない主義なんだからな俺は!金がないのにそんなもの買えるか!!」


本当は一人でも逃げ出したい気持ち満載だが、
それをやってしまったら後々自分が無事ではない事はなんとなく予想できたので
滝川は健気にもその場に踏みとどまっている。


「ここの地下一階にね、」

安原は足元を指差す。

「銀行のATMがあるんですよ。24時間営業のやつ。
 いやあ、今の世の中便利になりましたよねえ。」
「・・・・・・・・・・・・・。」


安原は店員に指輪を渡した。店員がその指輪を丁寧に小箱に入れる。


「カードは使わない主義でも、ATMからご自身の預金を引き出す方法くらいは知ってますよね。
 よく使うんでしょう?時間に不規則なお仕事をされていますし。」
「お前、まさかそれも知っててこの店を・・・・・?」


クスッ、と安原は不適な笑みを浮かべた。


「僕、ここで待ってますから。滝川さんが帰ってくるまでいつまでも待ってますから。
 いってらっしゃいv」





もはや安原少年独壇場である。