リハビリ

「もし世界で二人っきりになったらさ、」
「何?」
「名前とかって必要なくなるのかな。」


会話というものはふと思いついた言葉から始まる。
何気なく、何気なく、さり気なく。



「呆けていると思ったらお前はそんなこと考えてたわけか?」
「いや別に。今ちょっと思っただけ。」
「ふうん?」


どうなんだろうなと、特に気のない返事を返しながら
ナルはお気に入りの本に目を戻した。


「・・・・でも、それなら、」
「何?」
「もしお前の言うとおり、世界に人間が二人しか居なくて、
 その二人が僕とお前だったら、
 お前は僕の名前を忘れるかもな」
「・・・・・・・。酷いなあ。そんなに記憶力悪くないよ」
「どうだか。」
「ならナルは忘れるの?僕の名前」
「・・・さあ・・・どうだろう。忘れたくないな、僕は」



ふとした思い付きから、言葉は生まれていく。
さり気ない言葉から、会話は始まっていく。
世界は広がっていく。
気持ちは溢れていく。




「・・・・ありがとう。」
「?」


忘れたくない名前がある。
それはきっと、大切なこと。





fin