一人暮らしに慣れて。
一人ぼっちに慣れた。
あとは何に慣れればいい?






雨ふらし







洗濯物をたたむのはスキ。
食器は、ためてからガッと洗う。
掃除は、慣れるも何も私の職場での主な仕事はコレだし、
片付けも同様。っていうかそんなに物ないしね。
料理はキライ。
キライっていうか、何ていうか・・・・ほら、
むなしくならない?



朝、起きたら雨だった。
「あー」と小さく呟いて、私は軽く背伸びをする。
こんな事なら昨日のうちに布団干しときゃよかった。
夏だから晴れるだろう、なんて、ナルに言ったら
バカの二文字で返される安易な想像で後回しにしてたから・・・・・。
今日こそは、と思ってたのに。


自分の立てていた計画が、朝一番からダメになったら、
それだけでその日一日ダメになった気がしませんか?


誰に向かって訴えるでもなく、私はそのまま再び布団に倒れる。
うー、とか、あー、とか、意味のない事口に出してみて寝返りをうつ。
やる気しねえ。外雨だし。休日だし。なのに雨だし。
よりによってこんな日に限ってバイト休みだし。


時計の針は、かろうじてまだ午前中。


さあ、どうしよう今日。洗濯物は洗っても干せない。
掃除は晴れた日にやりたい。食器は昨日洗った。
宿題は論外。明日、安原さんでもつかまえなきゃ解けない。
テレビ・・・テレビって、午前中のテレビになんか面白いものってあったけ?
雨なのにわざわざ外出るのもめんどい・・・・。
二度寝しようにも目が覚めてきやがった。うーん、マジでどうしよう今日。
つうか午前中はもう捨てるか?でもそれはそれでもったいな・・・・



ピンポーン



安アパートに不釣合いな音が響く。
何、インターホン。そんなのここにあったんだ・・・って、
え、私の部屋に?


「まーいー、いるー?」


続いて軽いノックの音と声。私は慌てて起き上がり
そのままドアにかけていく。


焦ってドアを開けるとそこには
「アンタ何、まだ寝てたの?」
「・・・綾子」
目も覚めるような赤のキャミソールに薄いカーディガン。
ダークグレーの七分丈パンツ、
きれいな赤のペティキュア、ラメの入ったサンダル。
黒髪は雨のために艶を増している。
「っていうか、アンタそんなかっこでホイホイドア開けちゃダメよ!誰が来るかわかんないでしょ」
「えーでもここ来るのって友達とか綾子とか真砂子とかぼーさんジョンとか限られてるしー」
「・・・そーいうコトが言いたいんじゃないんだけど」

綾子はため息をついてブツブツ何かを言っていたけど、
私の視線は綾子の左手に注がれる。


小ぎれいな格好に似合わないようで似合っているスーパーの袋が2つ。


「綾子、どしたのソレ」
「ん?ああコレ。今日ヒマだから、アンタに少しはマシな料理の腕を身につけさせようかと思って」

綾子は笑って、まあ別にこんなに買う必要はなかったんだけどね、と言った。
早く中に入れなさいよ、とも。


外は雨。
右手に傘。
アパート。
にんじん。たまねぎ。エトセトラ。
笑顔。


「     麻衣、聞いてんの?」
「うん、聞いてるよ」
「じゃ、お邪魔しまーす。アンタはとっとと着替えなさい。エプロンとかってある?」
「あー・・・家庭科で作ったのがどっかに・・・」
「・・・今度から持参するわ」



一人暮らしに慣れて。
一人ぼっちに慣れて。
でも、料理は苦手。
綾子の作ってくれる料理の方がおいしいから。

私が上手にできたらもう作ってくんないんでしょ。

って言ったら綾子は目を丸くして、
んなわけないでしょ、アンタはナルにでも作ってあげればいいのよ。と言われた。

一人暮らし慣れて。
一人ぼっちに慣れて。
でも、人の優しさには慣れなくてもいいや。
この、ちょっとくすぐったい感じが、なんか嬉しいから。



そんな雨のお昼過ぎ。









fin


後言い訳


こんな休日とかいかがでしょうか?(笑)
もうすぐ梅雨の季節ですね。こっちは絶賛雨降られ中です。

2005.06.05